株式会社インサイトコミュニケーションズ

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効果にこだわらなければならない環境が、この仕事のベースを作り上げてくれた。

平成元年、私は、当時事件で世の中を騒がせていたリクルートに入社しました。周囲からの大反対の中、それでもリクルートを選択したのは、会う人のエネルギーが違うような気がしたことと、これほど世の中で叩かれているのだから、これ以上悪くはならないだろうという安直な考えからでした。これは入社してすぐに考えが甘かったことを思い知らされましたが…。大学時代まで運動部だった私は、体育会の先輩たちがそうであったように、当然営業職になるものと思っていましたが、営業研修を終えた後、配属されたのは思いもよらぬ制作職でした。当時、クリエイティブとはかけ離れた志向であった私にとって、それは大きな戸惑いでした。

新人時代は数多くの失敗をしました。リクルートの制作の仕事の特徴は、自分が作った広告の効果がどうだったかが、翌週にははっきりと数字で現れてしまうことにあります。時には効果の出なかった広告を前に、お客様から直接厳しい言葉を頂くこともありました。これは経験も実力もない新人にとって非常に厳しい環境でした。広告掲載費として投資を決断したお客様に、期待値以上の効果を出せないと、お客様との信頼関係は作り上げることはできません。そんなビジネスとして当たり前のことを、体で覚える日々でした。当時は、大手広告代理店が扱うTVコマーシャルなどの露出の大きい仕事を横目で見ながら憧れていましたが、毎週毎週、次から次へと何本も広告を作り上げなければならない中、同時に効果にこだわり続けなければならないリクルートの環境は、振り返ってみると現在の仕事の基礎を作り上げるには最高の環境だったのかもしれません。大勢のクリエイティブチームの中の一員として1年間に数本、大きな案件に関わり、広告の効果検証もなかなか明確にはできない働き方に比べ、少人数でチームを組み、クリエイティブの責任を全て負いながら、クライアントと共に圧倒的な場数を踏むリクルートの環境は、効果に対するこだわりと効果を生み出すために大切なものを身につける最高の場でした。

表現技術だけを磨いていても効果が出るようになるわけではない。

リクルートは社員のモチベーションを喚起する様々な仕掛けのある会社でした。その中でもクリエイティブコンテストと呼ばれる毎月行われる社内審査会で入賞すること、そして年間を通してその入賞ポイントの合計でトップに立つことは、数百人もの制作部の人間にとって憧れの的でした。当然、私もそれを目標にしました。どうしたらいい広告が作れるのだろう?どうしたら評価されるのだろう?当初は広告の表現技術こそが評価を左右すると思い込み、表面的にデザインやコピーについて学んでいました。しかし、数多くの失敗経験を積んでいくうちに、表現が面白かったりインパクトがあったりしても、効果を生み出すとは限らないことを知りました。そして、自分が制作者として表現したいことではなく、お客様が伝えたいと思っていること、お客様が伝えたくても伝えられないでいることを伝えることこそが重要なのだと気づくようになりました。表現を考える以前に、もっと前段階で、誰に何を言うべきかを明確にしなければ、いくら表現技術が優れていても効果は出ない。今となっては極めて当たり前のことですが、20代の仕事を通して嫌と言うほど思い知ったこのことが、現在の仕事のベースになっています。

心を動かす強いコンセプトを見つけ出し、そこに表現が掛け合わされると、異次元の効果が出る。

ただ、何を言うかを探ることは、簡単なことではありませんでした。多くの場合、お客さまは言いたいことがなんとなくあるのだけれど、それを上手く言葉に出来ないでいるわけです。様々な角度から質問を投げかけ、少しずつお客さまの気持ちを整理しながら、本当に伝えなければならないことは何かを明確にしていく。当然その時には、受け手の感じ方まで十分にイメージし、「こんな伝え方だったらこんな風に感じてもらえるのではないでしょうか」と少しずつ意識を一つにまとめていくわけです。この過程を踏む中で、コピーワークやデザインの技術の重要性を改めて学んでいきました。同じ事を伝えようとしても、表現一つで伝わり方は変わります。伝え方を10通りの中からしか考えられない人と、100通りの中から考えられる人では、伝わり方が違います。伝えるべきことを明確にし、伝える手法を選択し、受け手がどう感じるかをあらゆる角度からイメージする力が求められるのです。ここにこの仕事の難しさがあります。

しかし、これを追求していくうちに、次第にお客様から「そうそう、これが言いたかったんだよ!」と喜ばれる機会が増えていきました。現在、インサイトコミュニケーションズで最も大切にしたいと考えていることの原体験はここにありました。そして強いコンセプトを開発することの重要性に気づき、それを追求し始めると結果的にこれまでとは次元の違う広告効果の高い制作物を作り続けられるようになり、その実績が残り始めると、次第にステージの違う大きな仕事を担当するようになっていました。こうして視点が自分の表現したいことから、お客様の伝えたいことは何かに変わったことで、制作として憧れていた目標もクリアすることができたのです。

広告表現からコミュニケーションへ。視点を変えると、ソリューションのステージが変わる。

お客様とのコミュニケーションの中で、お客様が本当に伝えたいこと、伝えるべきことを整理し、コンセプトとして提示できるようになると、期待される仕事は広告の枠から大きく広がっていきました。

社内を活性化するためにどうしたらいいか。
理念を作り浸透させるにはどうしたらいいか。
新規事業のコンセプトを社内にも社外にもわかりやすく伝えたい。
イベントに5000人集め、盛り上げるにはどうしたらいいか。
新商品・新サービスのネーミングを考えたい。
印象に残るロゴを開発して欲しい。
1000人の学生を採用するためのコミュニケーションプランを考えて欲しい。
研修の効果をあげるためにはどうしたらいいか。

こうした依頼に応えていく中で、領域は大きく広がり、コミュニケーションの手段として扱うメディアも、グラフィック、ムービー、WEB、イベント、DM、冊子、社内報、屋外広告、プレスリリースなどと広がっていきました。しかし、どんな仕事でもコンセプトを明確にすることをスタートにするのは変えませんでした。そして、数多くの仕事を通して、どんな仕事でもそれこそが大切なのだと確信するに至りました。

制作の現場でリクルートの主要クライアントとも呼べる大きな取引のあるお客様の仕事を担当していく一方で、次第にリクルート自社の商品価値をいかに引き上げるか、リクルートという会社のブランドをいかに高めるか、リクルートの採用力を高めるにはどうしたらいいか、リクルートの社内を更に活性化するにはどうしたらいいか、といった自社の価値向上のためのプロジェクトを担当するようになりました。リクルートの事業の原点と言える人材ビジネスにおいては、「仕事が楽しいと、人生が楽しい。」というコンセプトを、制作を担う部門として独立したリクルートメディアコミュニケーションズでは「CREATE NEW COMMUNICATION」という事業理念を作り、そのコンセプトを核にコミュニケーション展開して社員の求心力を高めていきました。やがて仕事のバランスは自社案件のほうが多くなり、リクルートの商品・サービスをいかに世の中に伝えていくかをミッションとするマーケティング局へ異動することになりました。

クライアント側に立つことで見えてきた広告業界の課題。

他社でいう宣伝部に近いこの部署では、リクルート商品のコンセプトの見直しや顔作り、TVCMなどを使ったプロモーション等をメインで担当しました。大手広告代理店と進めるプロジェクトでは、これまでとは立場が変わり、クライアント側で代理店のクリエイティブチームと仕事を進めることになります。ここで数多くの疑問と広告業界の課題が見えてきたのです。

例を挙げましょう。日本の大手企業の多くがそうであるように、その頃のリクルートはある大型商品のプロモーションを行う際には、大手代理店数社に声かけをし、簡単なオリエンテーションを行った上で、コンペ形式でプレゼンを受け、その中から案とパートナーを選択するという方法が主流でした。しかし、この進め方はこれまでクライアントと直接じっくりと話をしながら仕事をし続けてきた私にとって、非常に違和感のあるものでした。オリエンが終わった後、2週間後にプレを受けるまで、いつでも問い合わせを受け付けますと伝えていてもどこの代理店からも何の連絡もありません。自分の経験から言ってアイデアを考える段階で確認したい疑問点が出てくるものですが、各社ともにその確認もなくプレゼンに来ていたのです。プレゼンでは各社から数案ずつ提案されるわけですが、その提案は表現のバリエーションだけであって、その裏に一貫したコンセプトがないことが多いことも不思議に思いました。一つの代理店の提案の中に、狙えるターゲットも効果も違うはずのコンセプトの異なる複数の案が、表現の面白さやインパクトで選択されるために並んでいるのです。お薦めの案を聞いても、どれもいいというニュアンスの返答ばかり。つまり、クライアント側がどれかを選んでくれることが第一なのです。クリエイティブのコンペでありながら、その先にあるメディアの大きな売上げを考えると、案を絞って提案することは難しい。それが代理店側の事情としてあったのでしょう。

自ら感じたクライアント側の課題。本質からぶれないために必要な動き方とは。

そして、一方で「誰」に「何」を伝えるかに最も敏感でなくてはならないクライアント側にも大きな問題があることを知りました。表現クオリティの高いものや、インパクトの強い案のプレゼンを受けると、本来大切にすべきコンセプトからぶれて、好き嫌いで案を選択しがちになってしまうのです。多くの企業がそうであるようにリクルートもプロジェクトごとに予算を持つ決裁者がいました。もちろんその人はクリエイティブの専門家ではありません。だからこそ、ここでコンセプトと表現が一貫していることの重要性を理解した人間が社内のベクトルあわせを行わなければならないのですが、これがなかなか難しいのです。その人間のポジション、発言力、あるいは決済に至るまでの社内プレなど、クリエイティブとは異なる能力が求められるからです。その力を発揮できる人こそが、ブランドマネジャーとして相応しい人材なのですが、そんな人材を有している企業はそれほど多くありません。異動したての私もこの壁にぶつかりました。しかし、一方でブランドを確立している企業には、社内に優秀なブランドマネジャーがいて常に一貫したコンセプトのもと、クオリティの高いコミュニケーションを発信し続けています。これは聞いたほうが早いと思った私は、どのように仕事を進めているのかを直接聞きに行きました。

そこで得た答えは極めて明快なものでした。外部パートナーと仕事をする時は、クリエイティブが分かる人間が代理店任せにするのではなく、自分自身で優秀なクリエイターを指名すること。クリエイターをパートナーとしてリスペクトし、その潜在能力を十分に引き出すこと。そのクリエイターと共にコンセプトを作り上げ、表現案を練っていくこと。代理店から上がってきた案として社内を通すのではなく、自分自身が当事者として案を作り上げ決裁者にプレゼンすること。そしてこれらは、すべて私自身がクリエイティブディレクターとしてチームを組むときにやってきたことでした。クライアント側に立つことで、知らず知らずのうちに自分自身がクリエイティブチームとの壁を作っていたのかもしれません。スタンスを変えた私は、プロジェクトごとに最適なクリエイターを指名し、自分自身がクライアント側でありながらもクリエイティブディレクターとして動くことで、本質からぶれないコミュニケーションを発信していくことができるようになりました。

インサイトコミュニケーションズで追求するコミュニケーションのあり方とは。

リクルートの商品コンセプトを考えたり、採用戦略を練ったり、TVCMを作り上げたり、他社にはないコミュニケーションを発信していく仕事は非常にやりがいのあるものでした。しかし、一人のクリエイティブを生業とする人間としては、社員としてリクルートという1社のためだけに力を発揮していくのではなく、もっと様々な企業のお手伝いをしてみたいという気持ちも強く持ち続けていました。それがインサイトコミュニケーションズを設立しようと思った大きな理由です。私が体験を通して学んできたコミュニケーションのあるべき姿に共感してくれる者たちが、仲間として加わってくれました。そして、私たちのスタンスに共感してくださった企業がパートナーとして私たちを選んでくれるようになりました。しかし、私たちはまだスタートしたばかりです。世の中には、コミュニケーションを改善したらもっと人が動くのに、と思うことがたくさんあります。私たちは、本質は何かをしっかりと追求していくことで、コミュニケーションの質を高め、人や社会を元気にしていきたいと考えています。私たちの提案を通して伝えるべきことが明確になり、「あぁ、すっきりした。」と感じてもらえるように。クリエイティブを通し、これまでとは違う効果を感じていただくために。そのために、私たちは体験から学んだ大切にすべきことを、これからも大切にしていきます。